先輩から教わったこと。それは「自分をブランド化せよ!」ということ

nicccyの「BAR屋」論

こんばんは(*^-^*)西舘です

 

 

僕がBAR屋になった時、先輩社員が3人いました。その中のひとりに、お客様から「プリンス」と呼ばれていたカリスママネージャーがいました。すらっと長身、色白、トークも冴えるしお酒にも詳しい、まさに打つ手なしのステキな先輩だったんですけど、彼は営業終わりの朝方に僕を含む駆け出し3人組にとある意地悪を仕掛けてきたんです。ただ、その意地悪は僕たちにとても大切なことを教えてくれるための仕掛けで、結果、「やっぱすげーこの人!」と、後輩3人は改めて尊敬の念を持つこととなりました。みたいな話です。ま、とりあえず始めますね!

 

 

先輩から教わったこと。それは「自分をブランド化せよ!」ということ

カクテルの世界はとても深い世界で、たとえ同じ材料、同じ分量で同じカクテルを作ってもどこか味が違うんです。家庭のカレーに近いですかね、箱の裏に書いてある通りに野菜をいためて、水を入れて、煮詰めて、ルーを溶かしても僕の母のカレーと隣の佐藤さんの母のカレーは味が違うんです。ま、佐藤さんの母のカレーは食べたことないんですけどね、間違いなく僕の母のカレーと同じ味ではないだろうなと確信を持って言えます。

 

 

さっそく話が逸れましたが、当時のカリスママネージャーの作るカクテルはどれも本当に美味しくて、その証拠に僕を大のハイボール好きに生まれ変わらせてくれたのはこのマネージャーのおかげだだとはっきり言えます。(マネージャーが初めて作ってくれたハイボールがビビるくらいに美味しかったんです。神の技術だなって心から思いました)

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そんなマネージャーが、駆け出し3人組で営業終了後に練習する機会があったんですけど、その場に付き合ってくれたことがあったんです。あまり直接指導をしてくれるタイプではないマネージャーが珍しく営業終了後に残ってくれただけでもテンションが上がってた僕たち。しかもマネージャーがこんなことを言ってくれたんです。

 

 

マネージャー:「じゃあ、一杯だけ作ってあげるよ!」

 

 

なななんと、あ、あの、マネージャーが僕たちのためにカクテルを作ってくれるだと!?これはいい機会だ、勉強させていただくしかないでしょと思い、じーっとマネージャーの一挙手一投足を見つめました。

 

 

マネージャーが作ってくれたカクテルは「サイドカー」という、とてもスタンダードなカクテル。作り手の技術が大いに繁栄される難しいカクテルです。さくさくとお酒をシェイカーの中へ注いでいくマネージャー。じーっと見つめる駆け出し3人組。仕事中じゃないのに妙な緊張感が場を包み込んでいました。

 

 

リズミカルにシェイカーを振るマネージャー。独特なそのシェイク技術は真似しようと思ってもなかなかできないオリジナル。そして約15秒後、マネージャーのカクテルは完成しました。

 

 

マネージャー:「飲んでみて!」

 

 

順番に口をつけていく僕たち。一口飲んだ瞬間の僕たちのリアクションがすべてを語っていました。

 

 

僕たち:「めっちゃ美味しいです!(*´▽`*)」

 

 

口当たりのまろやかさがすごくて、アルコール度数約30度とは思えない。これならあまり飲めない僕でも3杯は飲めそうなくらいにすーっと喉を通っていきました。そんな感想に浸っていたその時、マネージャーが思いもよらない一言を発しました。

 

 

マネージャー:「それ、ほんとに美味しいと思う?」

 

 

思うに決まってるじゃないですか!!って感じだったんですけど、マネージャーの不敵な笑みが気にもなりました。いったいどーゆーこと。。。

 

 

マネージャーが「それ、ほんとに美味しいと思う?」と僕たちに聞いてきた真意、それはあまりにも予想外で衝撃でした。

 

 

 

マネージャー:「さっきのカクテル、実は適当に計って作ったんだよね。だから美味しいわけないんだ。でも、おまえらは口を揃えて『めっちゃ美味しい!』って言ったよな?意味わかる?つまり、おまえらは味なんてよくわかってないってこと。俺が作ったから美味しいって勝手に思っただけ

 

 

マネージャーの性格の悪さと、僕たちのバカ舌が証明された瞬間でした。そして、「何を作るじゃなくて、だれが作るかが大切!!」というマネージャーからの無言の教えを頂戴した瞬間でもありました。実際のカクテルの味は美味しくないのに、美味しいと感じてしまったのは間違いなくマネージャーが作ったという事実によるもの。一種のマジックですね。イタリア人が作ったパスタはきっと美味しい、たとえ味が薄くても。だって、本場イタリアの人間が作ったパスタだから、先入観というマジック。

 

 

自分をブランド化すれば、たくさんのお客様にたのしい時間を提供できる。

自分をブランド化すれば、たくさんのお客様から感謝される。

自分をブランド化すれば、何をしてもステキに見える。

 

 

ありがとう、マネージャー。とてもわかりやすい授業でした。

 

 

おわり。

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yuki_nicccy

札幌の「BAR PENCIL VANI;LLA」代表。 1985年生まれ。21歳の冬にBAR屋の職に就き、現在まで延べ10万人以上のお客様と接する。 趣味は「楽しくお酒を飲みながらさまざまな人と話すこと」「読書」「カフェで引きこもること」「北海道コンサドーレ札幌の応援」。