[お客様と空間の気持ちを考える]ご案内にマニュアルなんて存在しない

nicccyの「BAR屋」論

こんばんは(*^-^*)西舘です。

 

 

バーに求められているもの、それは「より濃い時間を過ごすことができること」です。チャージ料を支払い、一杯の値段も決して安くない。そんな空間の中で僕たちBAR屋がわすれちゃいけないことは「お客様と空間の気持ちを考えること」なのではないでしょうかっていう話です。

 

 

具体的にどういうことかと言いますとですね、「ご案内にマニュアルなんて存在しない」ってことです。ちょっと熱弁させていただきます。執筆時刻は土曜の午後三時。ホットのアールグレイティーを口にしながら意識高い系気取った現役BAR屋の独り言です。

 

 

[お客様と空間の気持ちを考える]ご案内にマニュアルなんて存在しない

あなたは大切なだれかと一緒にゆっくりと時間を過ごしにバーやカフェに行ったことがありますか?多くの方は経験があることと思います。ないって方はある振りをして聞いてくださって構いません。証拠取りには伺いませんので。

 

 

たとえば、やっとこさ叶った気になる子とのデート。かるく食事を済ませて、いざバーへ向かいました。入り口の扉を開けると店内は賑わいを見せています。

 

 

バーテンダー:「いらっしゃいませ!二名様ですか?」

あなた:「はい!」

バーテンダー:「では、ご案内します!」

 

 

そして、席まで案内されたあなた。しかし、案内された席は両サイドで小団体が宴会をしている席。思ってた空気感の席とは違いました。

 

 

さて、あなたはこのあとどう気になる子との時間を過ごしますか?

 

 

飲み物を注文して、気になる子とゆっくりお話をすることでしょう。ただ、思ってたようなシチュエーションとが違いますよね?もっとゆったりと過ごすことができる席に座って、気が散らない空間が希望だったはずです。両サイドの計十名前後の関係のない人たちに囲まれるなんて想定外中の想定外。つまり、「空いてる席にいらっしゃったお客様をご案内するという『当たり前のマニュアル』が不正解だった」ことになるんです。

 

 

空いてるからってやみくもにご案内することはその瞬間はバー的にはプラスでも、お客様的にはマイナス。あなたは気が散って気になる子に対してポテンシャルを発揮できないまま終わる可能性が上がってしまう。そして、バー的にはあなたがもう一度来てくれる可能性を著しく下げる行為です。逆一石二鳥。

 

 

その日の売り上げなんて別にどうでもいいんですよ。厳密にいえばどうでもよくはないんですけど(どっちやねん!)、あくまでいらっしゃってるお客様がどれだけその空間に価値を見出してもらうかがいちばん大切なことです。

 

 

あ、ほぼほぼ相席レベルでごちゃごちゃいしてるのが価値ある場所だってもちろんありますよ。パイプ椅子が並べられた雑多な居酒屋さんとか、大規模なビアホールとか。ただ、こういった場所は逆にあまりゆったりとした席配置にするとムードが出ないから”あえて”ごちゃごちゃさせているわけであって、売り上げがどうこうって話は二の次なんです。だから限界までお客様をご案内するわけです。

 

 

じゃあ、バーやカフェが同じように空いてる席にバンバンお客様をご案内してもいいのかって言えばもちろん違います。バーにはバーのあるべき姿があって、カフェにはカフェのあるべき姿があります。つまり、「どれだけ自分たちの空間をカッコよく保つかどうかがとても重要」なんです。真似事なんてする必要もないし、真似しちゃダメなんですよ。身の丈に合わせなきゃ。

 

 

僕が駆け出しBAR屋だった頃、当時の店長は「座れればいい!」という考えのもと、狭い席だろうがなんだろうがお客様に「こちらどうぞ!」と言ってバンバンご案内してたんですけど、何度かクレームに繋がったことがありました。

 

 

 

お客様:「おいおい、ここにどうやって座れっていうの?狭すぎじゃん!予約したのにこれはないでしょ!(`・ω・´)」

 

 

これ、バーじゃなくて雑多な居酒屋さんだったら、「しゃあないよな!」ってなると思います。なんなら「良い席じゃん!楽しもうぜ!」くらいに感じてくださる方さえいるはずです。お客様のイメージに沿っていない、空間に似合わないからクレームに繋がるわけです。結果、二度とお客様は来てくれない、幹事様は週明けに上司部下から冷ややかな視線を浴びせられ幹事を下ろされる。またまた逆一石二鳥。

 

 

僕がデートでとあるバーに行った時にも最悪なことがありました。たまたま知り合いがそのバーに飲みに来てたんですけど、そこのバーテンダーが「こちらどうぞ!」と言って、その知り合いの隣の席に僕たちを案内してきたんです。アホかってね、お目目はちゃんとふたつ付いてますか?って言いたくなりましたもん笑。

 

 

完璧なご案内のルールなんてないんです。その瞬間瞬間で正解は変わり、その正解をその場で見つけることがBAR屋には求められているんです。だからチャージ料もいただけるし、一杯の値段もそれなりに設定することができる。じゃないとただの高い飲食店なだけじゃないですか。日本中のみなさまからサヨーナラーって言われて終わりです。バイバイなんてしたくないのに。

 

 

そんなことを考えながら毎日生きてます。だから僕はその日の売り上げなんかよりも、どれだけわざわざ来てくださったお客様の満足度を上げきることができるかだけに焦点をあててます。なので広い席にカップルをご案内することだってよくあります。どうしても最高の席にご案内できない時は必ずお客様に席を見てもらって確認します。それで「ここでもいいですよ!」と言ってくださった場合のみご案内させていただきます。確認めっちゃ大事です。お客様に時間に傷をつけないようにと考えたら当然なんですけどね。

 

 

そろそろお掃除の時間なのでおわりますー。ご清聴ありがとううございました。

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yuki_nicccy

札幌の「BAR PENCIL VANI;LLA」代表。 1985年生まれ。21歳の冬にBAR屋の職に就き、現在まで延べ10万人以上のお客様と接する。 趣味は「楽しくお酒を飲みながらさまざまな人と話すこと」「読書」「カフェで引きこもること」「北海道コンサドーレ札幌の応援」。