こんばんは(*^-^*)西舘です。
僕が働いているバーには系列店が数店舗あります。そして、その店舗にて働いているバーテンダーで競う「カクテルコンペ」なる行事があったんです。決められたお題(たとえば『○○というお酒を20ml以上使用して』とか)をベースに、バーテンダーひとりひとりがオリジナルでカクテルを創作する。そのオリジナルカクテルを5名の審査員が評価。いちばん評価が高かったバーテンダーが優勝です。
名前、レシピ、デコレーション、想い・・・。
すべてが一体化したカクテルが優勝するという、ま、とてもシンプルなルールの「カクテルコンペ」。僕も毎年参加してたんですけど、予選は通過できても決勝戦で良いところなしの結果が続いていました。
ですがある年、僕は社内のカクテルコンペにて優勝することができました。それは奇しくも前日に飲みすぎて超絶二日酔いで立ち向かったカクテルコンペだったのです・・・。
超絶二日酔いだったのに、社内カクテルコンペで優勝した話
その年もまた予選を通過した僕。ま、予選は通過しても別に嬉しくも何ともなくて。ていうか、カクテルコンペ自体にやる気をみなぎらせるタイプじゃなかった僕。あれですよ、「合唱コンクールとかやる意味ある??」とか思ってる生徒みたいな笑。ただ、社内行事だったので”とりあえず”出場してたくらいの熱量なもんでした。
決勝戦前日。特に緊張のひとつもしていない僕。「優勝するぞ!!」という意気込みも特になかったので、閉店までいらっしゃったお客様と後輩と3人で飲みに行ったんです。
翌日は午後1時から決勝戦。
仕事終わりに飲み始めたのは午前4時。
つまり、「確実に寝不足確定」な行動。
お客様に連れて行ってもらった場所は、数えきれないほどのウイスキーボトルがバックバーに並ぶ高貴な雰囲気のバー。ススキノにこんなバーがあったことなんて知らなかった僕と後輩はその空気感に圧倒されました。
↑このボトル数の10倍くらいはありました!!(・∀・)
お客様はこのバーの常連様のようで、バーテンダーさんが気さくに声を掛けてました。
バーテンダーさん:「こんばんは!!飲み放題でいいですか??」
お客様:「はい、そうします!!」
バーテンダー:「あ、飲み放題はおひとり様2杯までとなっております!!」
僕と後輩:「え!?!?(・∀・)」
キレッキレのジョークを交えて飲み放題の説明をしてくださったバーテンダーさん。オールバックの黒髪、真っ白なスーツ、もうちょい重ための空気感でも充分やっていけそうなのに、このラフさがまたギャップで良いのか・・・。
とりあえず僕と後輩はビールを、お客様はカクテルをオーダー。
僕:「すごいバーですね、こんなボトルの数見たことないです!!」
お客様:「ボトルと店内はすごいんだけどね・・・」
僕:「え??どうゆーことですか??」
お客様は引きつった苦笑い。何か調子でも悪いのかとも思いましたが、それなら僕や後輩と一緒に飲みになんて行くわけない。
きっと何かこのバーには隠されている秘密がある・・・。
たしかに、これだけのウイスキーのボトルがあるにもかかわらずに「基本は飲み放題のみ(by 店長さん)」のシステム。しかもひとり2,500円。
怪しい、怪しいぞ。
もしかして「ぼったくりバー??」。
いやいや、「ぼったくりバー」だったとしたらお客様がよくこのバーに来る理由がわからない。
どういうこと??
この、僕が感じた不穏な感情はこのあと始まった惨劇によってすべて辻褄が合うこととなりました・・・。
そう、人をダメにする「テキーラ合戦」が突然始まったのです!!
バーテンダーさんは計6人いました。そのひとりひとりが僕と後輩を連れて来てくれたお客様に、「いただいてもいいですか??」と声を掛けてくるではございませんか!!そのたびにお客様は「どうぞ」と返事。
なんだこのバー!!
テキーラを煽るだけ煽るだけのバー!?
そしてなんでイチイチ僕たちの分のテキーラまで用意されるの!?
そんなやりとりが1時間半ほど続きました。はい、僕は見事なまでにお酒に飲まれました。床で寝そうになってました。てか少し寝てました。深い眠りに落ちてしまう手前で起きて帰りました。あんまり覚えてないですけどね。
後輩もくたばってました。お客様はノーダメージではなかったそうですが(←後日談)、さすがに傷は負ったとのことでした。
そして迎えたカクテルコンペ当日。僕の体調は人生の中で上から数えた方が圧倒的に早いであろうレベルの不調。朝起きることができただけで自分を褒めてあげたいくらいでした。
グズグズな体調とハリケーンのように強い眠気を引っ提げて、僕はコンペの会場へと向かいました。カクテルを作る準備をしている最中も、目を閉じたら起き上がれなくなる気がして必死に目を見開く。お酒のキャップを開くたびに少しだけ香るアルコールで吐き気を感じる。
僕:「コンペ、ドタキャンしてもいいですか??」
心の中で思う本音。口から出かかる自分を押し殺す。ドタキャンなんてそできるわけない。審査員はもう目の前に座っている。始まりのゴングはもうすぐ鳴り響くんだから。
決勝にノミネートされたバーテンダーは僕を含めて10名。僕は10人目にカクテルを作ることになってました。
大トリやん。
大トリは別に良いんですよ、普段なら。他の9人の動きを見てから作れるんで。なんならラッキーくらいに思えます。
でも今回は状況が違います。
二日酔いです。
今すぐ帰りたい気分です。
夢なのか現実なのかよくわかってません。
自分の番が来る前に寝落ちしてしまいそう・・・。
気合いで目を開け続ける。1人、2人と終わっていくカクテルメイキング。
もっと急ぎ早にやるんだみんな!!
僕は限界手前なんだ!!
いや、限界突破中なんだ!!
そんな独り言をひとり心の中で叫び続けていると、9人目のバーテンダーのカクテルメイキングが始まりました。次は僕の番。それはカクテルコンペの終わりも意味しています。
深呼吸。
こんなに二日酔いでも緊張というものはしっかりと僕のところに届きます。心臓が徐々に動きを加速させていくのがわかります。
そして来る僕の番。
カクテルを作る手は震えていました。でも、これは緊張による手の震えなのか、二日酔いによる手の震えなのか見分けがつきません。どちらにせよ関係ない、さっさとカクテルを作ってスピーチをして帰ることだけを考えて手を動かし続けました。
シェイカーでシェイク。ちょっとカラダを動かすだけで吐き気が・・・
でも、ここで止めるわけにもいかないのでなんとか踏ん張ってシェイクを完了させた僕。
やっと終わった・・・。
きっと24時間テレビの100キロマラソンを終えたランナーは今の僕と同じような気持ちで溢れるんだろうな(←なわけない)。
結果発表を待つ時間。それはパンツのすそ上げを待つ時間と同じくらいに微妙な長さ。コーヒーを飲むには時間が短いし、牛丼を食べに行けばやや時間が余る。
なんてどうでもいいことを考えてたら、結果発表が始まりました。くだらないことを考えてる時間がいちばんスピーディーに時が経つような気がします。
上位3名が発表されるシステム。まずは第3位になった人から、さいごに優勝した人が呼ばれます。
やる気もなく、カクテルメイキングは二日酔いのせいでキレを圧倒的に欠いてた僕が入賞する可能性なんてゼロだと思ってました。むしろ僕が何かの間違いで優勝なんてしたもんなら他のバーテンダーに失礼だなとさえ思ってました。
でも、こんな時に限って優勝しちゃうのが面白い。
そうです、「優勝は西舘さんです!!」とアナウンスされたんです。
ビックリしすぎてビックリしました。
二日酔いじゃなくて”今酔い”なのかなと思いました。
でも、現実はやはり僕を優勝させている。
やる気がある人が勝つわけじゃない。
体調を管理している人が勝つわけじゃない。
作品のクオリティーが良ければ勝てることもある。
バーテンダーは「クリエイター」です。ひとりひとりの想像力、構築力によって差が生まれる。僕はもしかしたらクリエイトな能力に長けていたのかもしれません。
※自慢話に聞こえたかもしれませんが、後にも先にも優勝したのはこの1回だけです。翌年以降は1回を除きすべて予選落ちです。つまり、「優勝できたことはただラッキーだっただけ」の可能性大ありだったってこと。
おわり。
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yuki_nicccy
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